アメリカの児童書『What Was Ellis Island?(エリス島って何?)』をご紹介します。
エリス島の歴史を学べる一冊。
本書は「What Was?」シリーズの一つで、アメリカの出版社Penguin Workshopから出ている児童書です。
「What Was?」シリーズは英語ネイティブの8〜12歳が対象となっていて、歴史・事象・イベントなどについて学ぶことができます。
(「What was?」シリーズ紹介記事)
子ども向けに書かれているため、説明がわかりやすく丁寧な英語が使用されています。
大人の英語多読にピッタリの一冊。
自由の女神は人気の観光地ですが、すぐそばにあるエリス島はご存知ですか?
エリス島は1892年から1954年の約60年間、主にヨーロッパからの移民がアメリカへ足を踏み入れる最初の地となっていました。
大西洋を船で長旅をしてきた移民はアメリカに到着したとき、自由の女神を目にしてエリス島へ降り立っていたのです。
本書では、エリス島が移民の受け入れ口となった経緯や、入国審査方法、ヨーロッパからの移民たちのことや、移民のアメリカでの生活について学ぶことができます。
いまエリス島は移民の受け入れ窓口ではなく、当時の歴史を伝える場となっています。
アメリカに夢を抱いて降り立った数多くの移民。
移民を受け入れてきたエリス島の歴史を『What Was Ellis Island?』で学びましょう!
『What Was Ellis Island?』のレベルと難易度
【単語】
児童書ではありますが、使われている単語は幅広いです。そのため中学英語や高校英語ではカバーしきれない単語がいくつか出てきます。
本書のキーワードはこの2つ。
immigration(移住)
immigrant(移民)
この2つの単語は何度も出てきます。
その他には下記のような難易度の高い単語が出てきます。
prejudice 偏見
famine 飢餓
blight 害虫
pogrom 大虐殺
(ネガティブな単語ばかりが集まってしまいました。。。移民はさまざまな問題を抱えていたんですね。)
【文章】
一文が長すぎず、文章は読みやすいです。
関係代名詞を使った文章は出てきます。
【ストーリー】
エリス島の概要が最初に説明されていて、そのあとは時系列で話が進んでいきます。
順を追っているため、理解しやすいです。
単語 | ★★★☆☆ |
文章 | ★★☆☆☆ |
ストーリー | ★★☆☆☆ |
実際の文章をみてみよう!
実際に出てくる英文を見てみましょう。3つピックアップしました。(※カッコ内の日本語訳はブログ著者が訳しています。)
希望の島・嘆きの島
Ellis Island was a testing center run by the US government. Its purpose was to check immigrants and weed out the sick and unfit.
(エリス島はアメリカの政府によって入国審査が行われる場所でした。目的は移民を審査して、病気や不健康な人を排除することでした。)
アメリカ政府は、病原菌などをアメリカに持ち込ませないようにするため、身体検査や個人情報をチェックをする場所としてエリス島を選びました。
run by 〜によって運営される
weed out 不要なモノを排除する
移民たちにとってエリス島は、アメリカでの初めての地でありこれから希望に満ちた未来が待っていたため、“Island of Hope”(希望の島)と呼ばれていました。
しかし、審査の結果によっては入国を許されなかった人もいました。中には、本国に送還された人たちもいたのです。そのため“the Island of Tears”(嘆きの島)とも呼ばれていました。
入国審査の質問
Inspectors fired off a list of questions: Where did you last live? Are you married? Do you have a children? What is your occupation? Do you have family in America?
(検査官はリストに載った質問を次々とします。最後に住んでいた場所は?結婚はしているか。子供はいるか。仕事は?アメリカに家族はいるか?)
身体検査を通過したら、検査官からの質問の時間です。
fire off 矢継ぎ早に質問する、質問を浴びせ掛ける
質問はすべて英語で行われましたが、英語がわからない移民には通訳がついたようです。
いろいろと聞かれたようですが、基本的な質問が多いですね。
・Where did you last live?
・Are you married?
・Do you have a children?
・What is your occupation?
・Do you have family in America?
そのほかにもこんな質問があったようです。
Do you have a job waiting for you in America?
(アメリカに仕事はすでにあるか。)
この質問には”No(仕事はない)”と答えなければならなかったようです。
なぜなら当時の法律では、企業が工場や採鉱場などで働かせるために、移民を連れてくることを禁止していたからでした。
会社が移民を工場や採掘場で働かせるために、アメリカまでの渡航費を負担することがあったようです。
移民は、低賃金で劣悪な環境で働かせるターゲットになっていたんですね。
How much money did you bring?
(所持金はいくらか。)
移民は20ドルから25ドルの所持金が最低でも必要でした。
当時の物価がどれくらいだったのかは本書には記載されていないので、20ドルでどれほどの生活が保障できるものだったのかはわかりませんが、当時は20ドル程度は必要だったようです。
鉄鋼産業の発展
More than half of US steelworkers were immigrants. They worked twelve-hour days, seven days a week.
(鉄鋼会社で働く半分以上の労働者は移民でした。毎日12時間、週7日働きました。)
アメリカ入国を許されてエリス島から出た移民は、アメリカ全土に散らばっていきます。
1900年代に入ると、アメリカでは高層ビル・橋・鉄道の建設ラッシュが起き、鉄鋼産業が発展します。
移民の多くが鉄鋼産業の工場で働きました。
休みは一年のうち1日しかない環境だったようです。
毎日休みなく肉体労働をさせられるのは過酷ですよね。
twelve-hour days 一日12時間
seven days a week 週7日
『What Was Ellis Island?』の魅力!
エリス島の歩みを知ることで、アメリカの移民の歴史を学ぶことができます。
- アメリカの懐の深さを知る
- 知識がなくても大丈夫!周辺情報で理解度が深まる
- NY旅行に行く前や後に読みたい
1.アメリカの懐の深さを知る
身体検査ですぐに入国を認められなかった移民は、エリス島にしばらく拘束されました。
エリス島には病院があり、移民は病気や体調が良くなるまで病院で過ごします。治療費は無料でした。
また拘束中の1日3食の食事は、無償で振舞われていました。温かいシャワーを浴びることもできたようです。
Salvation ArmyやYWCAなどが女性たちのために、仕事を見つけられるようにボランティアを行なうなど女性へのサポートも行っていました。
いつアメリカ入国を許されるかわからない不安な拘束期間中でも、エリス島で生活は決して最悪なものではなかったようです。
アメリカ入国を許されてエリス島を出て現実の世界に行くと、移民に対する差別もあったようですが、エリス島では移民を受け入れる体制をとっていたんですね。
アメリカに移住を希望する人たちを拒まない環境が、今のアメリカを形作った理由の一つだったんですね。
2. 知識がなくても大丈夫!周辺情報で理解度が深まる
アメリカに行ったことがなくてもエリス島を知らなくても、どんどん読んでいくことができます。
本書は説明がわかりやすいだけでなく、当時の時代背景の説明や関連情報があるから理解度を深めることができます。
載っているのは例えばこんな情報。
- 自由の女神
- エリス島の一番初めに降り立った少女アニー・ムーア
- 鉄鋼王のアンドリュー・カーネギー
- エリス島で5ヶ国語を話す通訳として働き、その後NY市長になったフィオレロ・ラ・ガーディア
このようにエリス島に関係した情報や、当時の背景が載っているので、より理解を深めることができますよ。
さらに文章だけでなく巻末に写真がたくさん載っているため、当時の様子を知ることができるので想像がしやすくなります。
3.NY旅行に行く前や後に読みたい
ニューヨークに行ったら、絶対に訪れたい自由の女神。
自由の女神を訪れるなら、エリス島にも足を運びたくなります。
エリス島のメインの建物は、レンガ造りで立派。貫禄があります。
1954年以降、移民の受け入れ口としての役割を終えたエリス島は永らく放置されて廃墟となりました。
1965年リンドン・ジョンソン大統領が、エリス島は歴史的場所であると宣言し修復作業がスタート、1984年のロナルド・レーガン大統領の時にエリス島を博物館とする計画が進められました。
今ではメインの建物は「エリス島移民博物館」となり、当時のことを学ぶことができます。
自由の女神を訪れる前に本書を読んでおくとエリス島をさらに楽しめますし、旅行後に読めば旅の思い出とともに復習ができてオススメですよ。
私は2017年にNYに旅行に行き、エリス島のことはガイドブックに書かれている程度しか知識がないまま訪れました。
その時「移民の受け入れ口としては、あまりにも小さすぎない?」と感じたほど小さな島だったことを覚えています。
今回、『What Was Ellis Island?』を読んでエリス島のことをより知ることができたので、また訪れたいですね。
まとめ:移民の玄関口、エリス島
アメリカは1921年まで”open door policy”(開放政策)を取り、健康的な身体であれば誰でも受け入れていました。
移民たちは、ヨーロッパ各地で起きた自国での飢餓や差別から逃れるため、新天地アメリカに夢を抱いてやってきます。
夢や希望で溢れる人たちでごった返していたエリス島。
約11万平方メートルという小さな島ですが、大きな役割を果たしていました。
巻末にある写真を見ていると、さまざまな人でひしめき合っていてパワー溢れる場所だったのだろうと想像できます。
アメリカ人の10人に4人はエリス島から入国した先祖を持つそうです。エリス島は、アメリカを知る上でもチェックしておきたい存在ですね。
私は本書でエリス島のことを学習できたので、また行く機会があったらもっと楽しめそうです。グーグルマップにピンを立てて、旅行計画を始めちゃいました!
ちなみにエリス島を出て、NYのローワーイーストサイドに住んだ移民の多くは「テネメント」というアパートで暮らしていました。
当時の移民の生活を見ることができる「テネメント・ミュージアム」があり、1863年築のアパートがそのまま保存されているので、エリス島とセットで訪れるとより楽しめそうです。
エリス島と切り離せないのは、自由の女神の存在。
What wasシリーズには、自由の女神について学べる『What is the Statue of Liberty?(自由の女神って何?)』があります。
続けて読むとより理解が深まりますよ。
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