全米ベストセラー作家コリーン・フーヴァー(Colleen Hoover)のヤングアダルト恋愛小説『IT ENDS WITH US』をご紹介します。
恋愛、結婚、キャリアが取り扱われている恋愛小説で、根底にあるテーマはDV(家庭内暴力)です。
主人公はLily。
幼い頃から、父の母親への暴力を目にしながら育ってきました。
父が他界し、Lilyと母は頻繁に連絡をとりつつそれぞれの生活を歩んでいきます。
あるときLilyはRyleという男性と出会います。
Ryleはハンサムな上に、脳外科医。しかも体の関係もバッチリ。
二人は惹かれ合い付き合うことに。
仕事や恋愛がすべて順調に進んでいるように見えたLilyですがある日、衝撃的なことが起こります。
それはRyleからの暴力。
気づいたら嫌悪していた父と母の関係が、自分とRyleとの間に出来上がっていたのです。
DVとはいかにして起こるのか。
暴力を振るうRyleは最低な人間なのか。
LilyはDVという悪循環から抜け出せるのか。
Lilyの戸惑いや葛藤などの心の動きが手に取るように伝わる作品です。
ドキドキする恋愛小説のなかに、シリアスなテーマが描かれた『IT ENDS WITH US』をご紹介します。
【レベルと難易度】 英検2級・TOEIC700
単語 | ★★★★☆ |
文章 | ★★★☆☆ |
ストーリー | ★★★☆☆ |
※レベルは目安です
【単語】
日常生活で使う表現がたくさん出てきます。
恋愛中のドキドキ感。仕事や将来の不安。予期しないことへの驚き。
まさに日常会話のオンパレードです。
【文章】
Lily一人称の文章です。
10代20代の女の子が使う表現がメイン。
【ストーリー】
現在と過去が行ったり来たりしながらストーリーが進みます。
過去の描写は、手紙を読みながら振り返っているのが特徴。
現在と過去がリンクし合っているので、読み進めるごとにどんどん世界観に入り込んでいくことができますよ。
実際の文章をみてみよう!
実際に出てくる英文を見てみましょう。3つピックアップしました。(※カッコ内の日本語訳はブログ著者が訳しています。)
冒頭の一文をご紹介!
As I sit here with one foot on either side of the ledge, looking down from twelve stories above the streets of Boston, I can’t help but think about suicide.
(縁に片足を乗っけて座りながら、12階からボストンの街並みを眺めてると、自殺のこと考えちゃう。)
一文目からインパクトのある内容ですね。
この場所にいるところからすべてがスタートします。
ledge レッジ・縁
look down 見下ろす
suicide 自殺
ぶっちゃける
“Tell me a naked truth, Lily.”
“Pertaining to what?”
He shrugs. “I don’t know. Something you aren’t proud of. Something that will make me feel a little less screwed up on the inside.”
「リリー、本心を言ってみて」
「本心ってなんの?」
ライルは肩をすくめた。「なんだろね。人に言えるようなことじゃないこと。それを聞いたら自分のダメさに対する気持ちがちょっとだけラクになるようなこと。」
naked truthは「本心、赤裸々な真実」という意味。
本心をぶっちゃけ合うことでLilyとRyleの距離感がグッと縮まります。
二人の間でキーワードになってる言葉で、ストーリーに何度も出てきます。
本当の気持ちを言い合える仲っていいですよね。
一方で本心を言い合うことが、二人の関係性がこじれていく原因にもなってしまうのですが。。。
naked truth 本心、赤裸々な真実
pertain 関係する、関連する
screw up めちゃめちゃにする、台無しにする
過去と今の自分を繋げるエレンへの手紙日記
I move a few old letters and newspaper clipping aside. Beneath all of it, I found what I was hoping was inside these boxes. And also sort of hoping wasn’t.
My Ellen Diaries.
(昔の手紙や新聞の切り抜きを横にどけたの。その下に、箱の中にあるって期待してたものを見つけた。ちょっとだけ、なくなっていることも期待したけど。
それはエレン日記)
ここで出てくるEllenとはEllen Degeneres(エレン・デジェネレス)のこと。
アメリカの大人気トークショー”The Ellen Show”のホストでありコメディアンで、実在する人物なのですが、このEllenに宛てた日記をLilyはティーンの時に書いています。
この手紙日記が、過去と今の自分をつなぐ重要な役目になっています。
Ellen Degeneresはファインディング・ニモのドリー(Dory)の声優さんでもあります。
ドリーの声優であるということもポイントになっていて、作中に“Dory”や“Keep swimming”というワードが出てくるんです。
ファインディング・ニモとリンクすることで、より深く内容を理解できますよ。
アニメ『ファインディング・ニモ』や『ファインディング・ドリー』もチェックしておきたい作品ですね。
“The Ellen Show”は、Youtubeでも番組の一部を公開しています。
こちらはレオナルド・ディカプリオとの対談です。
本書ではEllenがカギになるので要チェックです!
DVを扱っているけどヘビーすぎない、でも考えさせられる
DVをテーマに扱った作品ではありますが、重たすぎる内容ではありません。
私はピンクの表紙やTikTokで話題になってたことから、ライトな恋愛小説だと思って読み始めました。
しかし実際は読み応えのあるストーリーで、DVについて考えながら読むことができました。
DV被害にあったことある方や両親がそうであった、という方は読んでいて苦しくなるかもしれません。
作者フーヴァーは、DVの実態を当事者に対してもそうでない人にも伝えようとしています。
エピローグを読んで知ったのですが、コリーン・フーヴァー自身の実体験をストーリーに織り込んでいます。
父が母に暴力を振るう家庭で育ったとのこと。
父への想い、母への感情。それぞれの複雑に絡まった関係性を、著者はLilyやRyleに反映させています。
だからメッセージ性の強いストーリーになっているんですね。
【NEXT STEP!】次はこの本にチャレンジ!
コリーン・フーヴァーは人気作品が多いので、他の作品も読んでみましょう!
UGLY LOVE
エロの要素が強め。泣けるシーンもあります。
『UGLY LOVE』もTiktokでアメリカのティーンに話題の作品です。ちょっとオトナな恋愛小説が好きなら、楽しめること間違いなし!
『UGLY LOVE』レビュー記事を書いているのでぜひご覧ください!